札幌で約25年近く「イングリッシュ・スプラッシュ」という英語教室を運営している校長、ホームス泉(Izumi Holmes)です。
今日は、言語学習の本質について、ちょっとカジュアルにお話ししたいと思います。
「英語を学ぶ」と聞くと、多くの方はまず単語や文法、フレーズの暗記を思い浮かべるかもしれません。もちろん、語彙や文法を身につけるのは大事なことですが、それだけが言語習得ではないんです。むしろ、その言語独自の考え方や世界の捉え方を、自分の中に取り込んでいくことこそが、本当の学びだと思います。
パピヨンに見るフランス語の世界観
たとえば、日本語では「蝶(ちょう)」と「蛾(が)」は別々の名前があって、イメージもガラッと変わりますよね。でもフランス語だと、どちらもまとめて「パピヨン(papillon)」と呼ぶんです。
厳密には「夜の蝶(papillon de nuit)」とか、服を食べる害虫の「mite(ミット)」みたいに、少しずつ分けた呼び方はあるんですが、日本語ほどハッキリ区切られているわけじゃありません。だからこそ、「蝶も蛾もほぼ同じグループ」 っていう捉え方が自然と根付いているわけです。
そのせいか、フランス語圏の人たちは「蝶=きれい」「蛾=嫌な虫」みたいな極端なイメージはあまり持たず、害虫じゃなければ同じような存在として見ている面があるんですよね。
エスキモーの「雪」にまつわる豊富な言葉
もうひとつの有名な例が、エスキモー(イヌイット)の言葉における「雪」に関する多彩な表現です。
私たち日本人だと「雪」と一言で済ませちゃうところを、雪国に暮らす彼らは、雪の質感や状態、降り方などによってたくさんの単語を使い分けているそうです。湿り気のある雪とサラサラの粉雪を区別するのはもちろん、「積もり始めの雪」「踏み固められた雪」など、とにかく細かく呼び方があるんです。
こういう違いは「使う言葉」そのものが「何をどう見ているか」を反映していて、単語が増えるぶんだけ、世界を細かく見分ける“目”も養われているんでしょうね。
言語は「思考のレンズ」を変える
これらの例に共通するのは、言語によって私たちの考え方や物の見え方が変わるということです。言語学には「サピア=ウォーフの仮説」という考え方もあって、どんな言語を使うかによって、物事の捉え方や世界観が変わる可能性があると言われています。
• フランス語では蝶と蛾をほぼ同列に扱うため、あまり大きな違いを感じにくい
• エスキモーの言葉では、「雪」を多彩な単語で区別するだけの繊細な見方が育まれている
たとえば海外旅行で現地の言葉に触れたとき、「あれ?日本では思いつかなかった感覚だな」と感じることがあるかもしれません。まさに言語による世界の見え方が違うからなんですよね。
学習は「翻訳」から飛び出すところがスタート
外国語を学ぶ段階でよく言われるのが、「日本語で考えてから訳すんじゃなく、そのまま英語(あるいは学んでいる言語)で考えるクセをつけよう」ということ。これは、ただ文法をスラスラ使う練習をしましょう、というだけではなくて、その言語特有の感覚や発想を取り入れてみようという話なんです。
英語やフランス語、ほかの言語でも、それぞれに独自の文化背景があって、物事の切り取り方や表現のしかたが違います。そこに触れていくと、“言葉を学ぶ”=“新しい世界を発見する” という面白さを感じられるんです。
まとめ
• フランス語の「パピヨン」やエスキモーの多彩な「雪」の呼び分けは、言語が人の認知や価値観に影響することを象徴している
• 単語を覚えるだけじゃなくて、その言葉が表す世界観や考え方に触れるのが、言語学習の本質
• 言語を学ぶことで、新しい“レンズ”を手に入れて、物事を多面的に捉えられるようになる
言語学習は、ただテストの点を上げたり資格を取ったりするためだけのものではありません。新しい価値観や思考法を得られる貴重な機会なんです。次に外国語に触れるときは、「自分がまだ見たことのない視点」に出会うつもりで、楽しんでみてくださいね。